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『globe』と『FACES PLACES』の考察。

今からちょうど10年前の1997年3月、"globe"が2ndアルバム『FACES PLACES』をひっさげ4大ドームツアーを敢行し、僕は東京ドーム公演初日に足を運び、スケールの大きさに度肝を抜かれ、こう思った。

『globeをずっと応援する事になるだろうなぁ』

"小室哲哉"が設定した"和製2unlimited"という裏テーマを、1996年3月にリリースされた1stアルバム『globe』で見事に完成させてしまい、同時にダンスミュージックと邦楽の融合という小室哲哉自身が"TM NETWORK"時代から追い求めてきたテーマのひとつの頂点とも捕えることが出来ると思う。カラオケで親しみやすいキャッチーメロディーに、俗に"小室サウンド"と呼ばれる煌びやかなダンスサウンド、その瞬間瞬間を楽しんでいる若者を描いている歌詞など、見事に時代を切り取り、邦楽史上初の400万枚を越える売上枚数を記録した。その1年後にリリースされた『FACES PLACES』では『globe』でのダンスサウンドは影を潜め、小室哲哉のプログレ志向が炸裂し、生音中心のロックバンドとしてのアプローチを見せ、350万枚越える売上枚数を記録した。

『FACES PLACES』は、テーマ的にも音楽的にも、かなり神がかってるなって、この年齢になって思い始めた。『globe』では生音はエレキギターとピアノだけだったのに対し『FACES PLACES』では、ギターやドラムやベースはもちろん、ブルースハープやグロッケンまで登場という、たった1年でダンスミュージック・ユニットが、オルタナティヴ・ロックバンドに変貌を遂げるユニットは他にはないと思う。それから『globe』との決定的な違いは、やはり歌詞だと思う。たとえばタイトル曲『FACES PLACES』では、『globe』で表現された刹那的な悦楽の裏に潜む虚しさや、拭い切れない不安や孤独感を、『Anytime smokin' cigarette』では、日常の中で人間関係を体よくやり過ごすための作り笑顔の裏に隠された苛立ちと焦燥感、本音、怒りを、煙草をキーワードに描き、『a picture on my mind』では、当時流行のプリクラを題材にしながら、プリクラに写った笑顔と裏腹の孤独感を描き、”決して他人には見せられない深層心理”を見事に表現されているように思える。それが、やっと最近になって理解できるようになってきた。

今思えば『私は私、人は人』という半端な個人主義が、熱くなることはダサいことでペシミストである事がかっこいいという空気が、この時代に蔓延していたような気がする。その結果、本質的なコミュニケーションの欠落と圧倒的な孤独感が襲い掛かり、その先に待っていたものは、どうしようもないくらいの閉塞だった。『globe』と『FACES PLACES』は『表』と『裏』なのかもしれない。『Regret of the Day』と『Anytime smokin' cigarette』なんかを聴き比べてみると、良く分かると思う。僕と同じ年代の方たちに、以上の事を踏まえてもう一度この2枚のアルバムを聴いてみていただきたいと思う。

by msseq | 2007-03-13 02:17 | Blog  

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